TED:ロバート・ウォールディンガー『人生を幸せにするのは何?最も長期に渡る幸福の研究から』

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要約と感想

人生の目的は何か

 彼は、若者達へのアンケート調査結果から話を始める。それは、「人生の最も大切な目的は何か」という質問であり、80%以上の人が「裕福になること」と答え、その中の50%の人は「有名になること」とも答えたそうだ。現代では、人々はより働きより生産的になることが良い人生の条件であると信じていて、それがこのアンケートの結果につながっているのだと説明する。

最も長期に渡る幸福の研究

 「ハーバード成人発達研究」という研究があり、彼はその主任を務めている。この研究では、75年間に渡り724名の男性を調査し続け、彼らの人生がどのように変化していくのかを記録しているという。

 研究を始めるにあたり、二つ異なるグループが研究対象に選ばれた。一つがハーバードの大学生で、もう一つがボストンの貧民街の少年たちだ。その調査は本人や妻、子供たちから話を聞いたり、医療記録を調べたり、血液や脳の検査を行ったり様々な方法で行われる。膨大な情報を集めてきた結果、何が人々を幸福で健康にするかが分かったというのだ。

何が人々を幸福にするのか

 「良い人間関係を築くこと」、これが幸せな人生を送るための唯一の方法だという。家族、友人、社会と良い関係を築いている人が、より幸福で健康に長生きする、この調査結果は疑いようのないものだというのだ。一方で、孤独であることはむしろ害になることも分かったそうだ。単に幸福を感じないというだけでなく、身体機能や脳の機能が衰えるのも早く、短命になることが分かった。

 ただし、この「良い人間関係」とは量ではなく質が大切であるという。友人の多さやパートナーの有無は本質的な問題ではなく、身近な人々との良好な関係が築けているのかが問題となる。例えば、愛情のない結婚生活はむしろ離婚する場合よりも悪い影響をもたらしうる。まとめると、良い人間関係は幸せを増幅し、苦痛を緩和する。孤独は幸せを感じづらくし、苦痛を増幅する。

 もちろん、愛情あふれた生活が幸せであることは、誰もが知っているはずだ。それにもかかわらず多くの人々は「裕福であること」が良い人生の条件であると答えていた。なぜこのような差が生まれ、愛情が軽視されるのだろうか。

幸せな人生のために何をすべきか

 彼はその理由として、「私たちは簡単に手に入るものを好むが、人間関係は複雑で、維持するには多くの労力を要する」と説明する。そうなるとつまりは、幸福な人生を送っている人というのは身近な人間関係から目をそらさずに良い関係を築く努力をしてきた人であるということになる。

 では具体的にはどうすれば良いのだろうか。彼は例として、パソコンやスマホを見ている時間を人と過ごす時間に変えてみたり、長い散歩やデートなど新鮮な事を一緒にしたりすることを提案している。しかし、言われたままに実行するのでは彼のいうところの「簡単に手に入るものを好む」状態のままだ。身近な人間関係については、他人やネットから安易に答えを求めるのではなく自分自身で試行錯誤することが重要なのだろう。

要点

  1. 良い人生は良い人間関係によって築かれる。
  2. 孤独は心身に悪影響を与える。
  3. めんどくさがらず、良い人間関係を築くための努力をすることが大切。

英語表現

Studies like this are exceedingly rare.

このような研究は非常に貴重です。

like this ・・・ このような
exceedingly rare ・・・ 非常に稀

Good relationship keeps us happier and healthier. Period.

良い人間関係が私たちを健康で幸せにする。以上。

keep A + B ・・・ AをBの状態に保つ

The experience of loneliness turns out to be toxic.

孤独でいることは有害になるという調査結果が出た。

turn out 〜 ・・・ 〜であることがわかる
toxic ・・・ 有毒な、有害な