物語文の読解について(気持ちを理解する①)

例題

 今日は算数のテストが返される日です。前回のテストで太郎君は73点を取り、そのときはお母さんにひどく怒られました。太郎君はまた悪い点数を取ってしまわないかと心配していました。そのため、今日は大好きな給食のカレーも残してしまうほどでした。
午後の授業が始まり、先生からテストが返されました。太郎君のテストの結果は70点です。それを見た太郎君は大きなため息をつきました。

問い)太郎君はなぜため息をついたのでしょうか?

  回答例1  大好きなカレーを残してお腹がへっていたから。

  回答例2  テストで悪い点数を取ったから。

  回答例3  テストで悪い点をとったことで、お母さんに怒られると思ったから。

 小学校の国語の読解問題をイメージして作ってみました。回答例のうちどれが最も良い回答でしょうか。それだけでは簡単なので、間違っているものについてその理由も併せて考えてみてください。

解説

 例題について解説をしていきます。まず、回答例1から見ていきましょう。お腹が空いていること太郎君がため息をついたこととの間に直接の関係はありません。無関係な出来事を選んでいるため誤答となります。続いて回答例2を見てみます。関係のある出来事を選んでいるため一見良さそうに見えます。しかし、太郎君の気持ちについての記述が抜けているため誤答となります。(よくある間違いの例です)そして、回答例3が正答です。太郎君のため息をつくという「言動」は、テストで悪い点を取った「出来事」からお母さんに怒られるという「気持ち」になったことが理由です。

出気言

 物語文の読解では「出気言(できごん)」を意識することが大切です。これは「出来事」、「気持ち」、「言動」の頭文字を覚えやすいように造語にしたもので、読解の指導で用いられる方法の一つです。物語文では、なにが起こったか(出来事)、それに対する主人公の心情の変化(気持ち)、そしてその結果何をしたか(言動)という記述を見逃さないように読み進めることが重要です。

なぜかというと、出題される問題の多くはこの点について問われるものばかりだからです。この繋がりがわかれば、子供たちの多くが苦手とする記述問題でも自信をもって回答することができるようになるでしょう。(ちなみに論説文も基本的には同じで、「作者の気持ち」に置き換えて考えれば良いのです。)

出来事と行動をつなぐ心情の変化の描写に注意する

気持ちを理解する

 物語文の読解では主人公の心情(気持ち)を理解することが大切です。採点でも気持ちについての記述が抜けていると減点ではなく誤答とされることがあります。また、よくある設問に「主人公の心情を最もよくあらわしているものを選びなさい」というものがあります。これはまさに気持ちを理解できているかを問われるものです。

 物語文の読解においてだけでなく、気持ちというものを理解することは生きていく上でもとても大切なことです。相手の気持ちを正しく理解することでコミュニケーションは円滑になるし、自分自身の気持ちを理解することで人生をより良いものにしていくことができるでしょう。

しかし実際の人間の気持ちはとても複雑なもので、この「出気言」だけでは説明しきれません。例題の太郎君のように、お母さんに怒られることを考えて落ち込む子がいる一方で、そんなことは屁にも思わない子もいます。この違いはどこから来るのでしょうか。生まれつきの性格かもしれません。こう考えると変えるのは難しそうです。

一方で、そうではなくて単なる「考え方のクセ」であり、自ら変えていくことができるという考え方もあります。後者を心理学では「認知」と呼びます。次回はこの認知について解説していきたいと思います。