テントとツエルトどっちが登山に向いているか?

比較するアイテム

ツエルト2ロング(ファイントラック)

メリット

  • 軽い
  • ポール不必要
    (トレッキングポールで代用可能)
  • 撤収が楽で早い
  • メンテナンスが楽

デメリット

  • 完全防水でない(結露と浸水がある)
  • 虫も入ってくる
  • 前室がない

ドマドーム2(アライテント)

メリット

  • 強風にも負けない
  • ほとんど結露しない
  • 前室が便利
  • 浸水しない
  • 虫も入らない

デメリット

  • かさばる(ポール3本)
  • 撤収に時間がかかる
  • メンテナンスも手間がかかる
ドマドーム2 ツエルト2ロング
携帯性 △(2000g) ◎(340g)
耐風性能
防雨性能
浸水の有無 無し 有り(床下)
虫の侵入の有無 無し 多少
結露の有無 少ない 多い
設営と撤収
メンテナンス

項目別の比較

携帯性について

 ツエルトの圧勝。本体は340グラムと超軽量。さらに、トレッキングポールを利用すれば別にポールを持っていかなくて済む。グランドシート、ペグ、細引きなどを含めても牛乳パック1本ほどの体積で収まる。ビパーク(緊急避難)用にもとりあえず携行する気になる。
テントの場合は、一人用であればかなりコンパクトではあるものの緊急避難用にわざわざ持っていくことはない。

耐風性能

 強風にも耐えうるのは山岳用テントのアイデンティティである。愛用のドマドームは北アルプスの稜線上のテント場で丸2日間強風にさらされてもビクともせずに立っていた。ツエルトでは試すまでもなく危険である。

防雨性能と浸水

 レインフライを掛けたテントの方が防雨性能は良いが、素材の進化によりツエルトでも必要十分な防雨性能がある。ただ、テントの場合には下部がバスタブ構造になっているため床下からの浸水はないが、ツエルトでは下部が開く仕組みになっているので浸水する可能性がある。そのため、水はけの悪い場所を避けて設営するなど気を遣う必要がある。

虫の侵入

 同じくツエルトでは下部が完全に閉じていないため多少の虫の侵入がある。刺す虫がいるような場合にはシュラフに加えて蚊帳を併用した方が安心だ。

結露の有無

 ドマドームは優秀で結露はほとんど気にならない。ツエルト2ロングは結露しにくいコーティングを施しているそうだが、一晩でタオルを絞れるくらいの結露があった。それでも水滴が落ちてくるほどではないため、実用上は問題がないと言える。ただ、ツエルトに直接触れてしまえばシュラフが濡れてしまうので、サイドリフターやインナーポールなどを使い室内空間を広くした方が良い。

設営と撤収

 設営については慣れてしまえばどちらもかかる時間はそれほど変わらない。自立するテントでは組み立てた後に移動することも容易だが、ペグで固定するツエルトでは設営場所を見極めなければならない。
 撤収についてはツエルトが圧倒的に早くて楽だ。細引きを緩め、ペグを外し、本体を折りたためば終了。テントの場合には、フライと本体それぞれの収納に加えてポールの分解もあるため時間がかかる。雨が降っている中でのテントの撤収はできればしたくない作業だ。その上、水分を吸ったテントはさらに重量が増えて荷物になる。

メンテナンス

 どちらも帰宅後に洗濯をするようにしている。汚れをシャワーで流してから陰干しするのだが、ツエルトの方が狭い浴室でも無理なく作業でき、乾くのも早い。このため、気軽に使う気になる。

その他

 テントにはフライを利用した前室があり、靴などを置くのに役立つ。ドマドームではこの前室が広く、何かと役に立つ。(ツーリングテントとしては最強だと思う)ツエルトにはそれがなく、雨の時には全てを内部に入れなければならない。

結局どちらを使うか?

 個人的に、登山での第一選択肢はツエルトになる。快適性は圧倒的にドマドームだが、登山では軽さと手間の少なさを優先させたい。山岳用テントは雨風に強いものの、そういった悪天候下での設営・撤収は結構大変だ。その上、強い雨風の中でのテント泊は快適とは言えず、慣れないと寝ることもできない。大天井岳のテント泊では強風で夜中に4〜5回起こされた。これらの理由から、悪天候のときには無理をせずに小屋泊に切り替える方が良いと思う。テント場は山小屋が管理しているため、なにがなんでもテントを張らなければならない状況はあまり考えられない。
 そこで、第一にはツエルトを携帯し、それで耐えられないような天候であれば小屋泊にする。ただし、稜線上のテント場では、急な天候の変化に対応できるように山岳用テントでないと危険である。

 まとめると、テント場が稜線上にあるのならば、山岳用テントを持っていく。そうでなければツエルトを持っていく。どちらの場合でも、快適に過ごせない気象条件であれば小屋泊に切り替える。安全な山行のためには良い睡眠を取ることが優先であり、無理をしてまでテント・ツエルト泊にこだわるのは賢明ではない。